真面目な人や頑張りやの人に共通して認められる傾向として、いつも「これではいけない」という気持ちが心の底に流れているものです。ふだんは気づかないことも多いでしょうが、いざ挫折したり病気になったりして行き詰まるとどうしても「これではいけない」という気分に陥ってしまうものです。そこから出発するものですからどうしても不安や焦りに突き動かされた考えや行動になってしまいます。結果は当然芳しくないわけですからますます不安や焦りが募ってきます。そして悪循環の泥沼に陥ってしまいます。
心理学の用語に「基本的信頼」という言葉があります。生まれてから一才になるまでの間、回り、とりわけ母親との関係の中で安心感、信頼感が持てた場合、その後の生育に好影響を及ぼすわけですが、何らかの理由でこれが獲得できなかった場合、後々、様々な問題や病気を引き起こすことになります。すなわちこの基本的信頼こそ、人間が育つ上での基礎なのです。このように安心感、信頼感から出発することが健康のまた幸福の条件といえるでしょう。
川で溺れたときの対処法を小耳に挟んだことがあります。急流に流されると人はどうしても不安に駆られ、早く岸に泳ぎ着こうとするわけですが、ついには体力を消耗して溺れてしまいます。助かる途は全身の力を抜いてリラックスするのだそうです。リラックスすると人間の体は浮くようになっているので流れに身を任せているうちに助かるチャンスも訪れるといいます。
このように、行き詰まったり、困難に直面したときにこそ「大丈夫、これでいい」とありのままを受け入れる勇気を持つことです。心の奥底に基本的信頼、安心感を持つ人は強いものです。ここから出発することが困難克服の王道なのです。