ふれあい診察室

2014.06.19更新

 Aさんは元高級官僚の天下りで、ある公団の重要ポストに就いたが上司との折り合いが
悪く、さらにその上司と部下との板挟みなどからうつ的となり職場に出ていけなくなった。
同期の仲間などが心配して色々配慮してくれるが、自信を失い、なかなか立ち直れない。
休職してかなりの期間になるが、復職の目途が立たないとのことで診察にみえたものであ
る。「昔元気で働けていた頃がなつかしい。つくづく、不甲斐ない今の自分が腹立たしい」
とますます落ち込むばかりである。
 Aさんに限らず病気になった自己を認められずますます自責的となり、病状が悪化する
という悪循環に陥る人は少なくない。このような現象の背景には権威主義、権力主義的な
価値観が潜んでいるようだ。
 権力とは文字通り「権(かり)の力」である。政治権力などはそのものであるが、敷衍
して考えれば、地位や財産、家柄、学歴などが権力といえよう。さらには若さや健康、美
しさや、かっこよさもそれがかりそめのものという意味では権力といえよう。すなわち、
このような権力を自身の価値と考える人は、それを失ったときに自身の生きる拠り所を失
うことになってしまう。働けない自分を責めたり、病気の自己を卑下する背景にこのよう
な権力志向の価値観がある。私が尊敬する鎌倉時代の僧、日蓮は身分、家柄が絶対的価値であった時代に自らが「旋陀羅が子」(最下層の家柄の出身)であることを誇りとし、権力の中でも最高の国家権力に何の後ろ盾もなく立ち向かわれたのである。権力主義と人間主義を対比する上でこれ以上鮮明なモデルは見あたらない。一人の自立した人間であることの偉大さがこれからますます問われる時代になってくるのではあるまいか。

投稿者: オボクリニック

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