完璧を目指す人はそれ自体やりがいがあるようにみえるが、完璧が達成できないとき無用な葛藤に陥りやすいともいえる。すなわち、完璧を自身に課す人は初めから自分を否定的に捉えているものである。したがって、ちょっとしたきっかけでも深く傷ついてしまう。
Sくんは幼稚園の年長であるが、気管支喘息とてんかんがある。喘息の発作で無呼吸状態になったことがてんかんの原因かもしれないと大学病院の医師から言われているという。Sくんのお母さんはそれは全部自分の看護が至らなかったためと思い、いつもSくんに申し訳ないと自分を責めている。その結果ついイライラしたときは上の娘に怒りをぶつけてしまい、またその自分を情けないと責めてしまうという悪循環に陥っている。元々責任感が強く、子供のためならすべてをかけるタイプなだけに余計に出口が無くなっている。
最近、一番上の子をひどく虐待してしまうことで悩んでいる母親が多いといわれているが、Sくんのお母さんもその一人である。このようなお母さん方に共通していることは、子育てに一生懸命になるあまり、不安が強く、また期待した結果がでないときのショックや自責の念に陥りやすい。その葛藤が、上の子への攻撃となっていくようである。
このような場合、ゆとりが無くなっているわけであるから、回りの人達がカバーしてあげることが重要である。その上で、あらためてお母さん自身が、自身を追いつめる悪循環に陥っていることに気づくことが必要であろう。子育てに失敗や挫折がつきまとうのは当たり前、それくらい偉大な事業をしているのだからと達観すると同時に、もともと持っている自己否定、自身を追いつめる癖を変えるチャンスと捉えてほしいものである。