ふれあい診察室

2015.03.11更新

 Kさんは二十代半ばの女性会社員であるが、職場の人間関係のストレスで過食症になって受診されている。イライラすることも多く、時々それが高じると手首を切ることもあるという。会社ではKさんは同僚や上司に気を遣い、嫌われないように、いつもみんなと協調していくことをモットーとしている。しかし、協調していこうと思えば思うほど緊張が高くなり、かえって失敗したり、周りから嫌われてしまうのだそうである。Kさんにとっての協調性は自分の本心や感情を殺して周りに合わせていくことになっているわけである。このKさんのような落とし穴にはまっている人は少なくない。
 我が国では「和を持って尊しとす」といわれるように団結・協調性は非常に重要な価値である。しかし、二通りの協調性があることに気づかないとKさんのような落とし穴にはまってしまう。すなわち、自分らしさを殺す協調性と自分らしさを生かす協調性である。前者のように自分の本音や個性を殺して協調するというのは団結というより烏合の衆になってしまうといえよう。しかし、団結や協調性をいう多く場合、我が儘や自己中心性を排さなければならないと強調するあまりに前者の協調性に陥ってしまいがちである。
 黒澤明監督の「七人の侍」という有名な映画がある。野武士集団の略奪に苦しめられている村をそれぞれ個性的な七人の侍が村人と一緒に守っていくというあらすじである。それぞれが絶妙な役割を果たして団結を強めていくことによって、目的を達っすることができるわけである。
 このように一人一人の個性を輝かせながらおたがいに理解し合い、守りあって団結・協調していく。この生き方が本当の協調性ではなかろうか。

投稿者: オボクリニック

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