ふれあい診察室

2015.05.29更新

 S君は高校三年の受験生である。一学期の期末テストで躓いてから勉強に身が入らなくなり、自己嫌悪に陥るようになった。時には他人が自分のことを噂しているような気までしてきた。このままでは来年の受験に失敗するのが目に見えていると思うとますます追いつめられた気分になるのだそうである。S君は高校受験の時にも中二の終わり頃から精神的に不安定になって、眠れなくなり、精神科にかかったそうである。
 S君に限らず受験や課題に直面したとき、失敗を恐れて、不安になったり、緊張したりするものである。しかも失敗を恐れれば恐れるほど、S君のようにますます追いつめられていく。
 先日、本紙で次のような記事が目を引いた。ホンダ自動車の創業者本田宗一郎氏が自身の仕事を振り返り、「99%は失敗の連続であった。そしてその実を結んだ1%の成功が現在の私である」と語ったそうである。
 この話から昔やった遊びを思い出した。砂場で土まんじゅうを何段まで重ねられるか競うのである。たいていは二、三段で崩れてしまう。崩れてしまえば失敗だが、もし十段の積み重ねに成功して、1メートルの高さにまで積み上げることができたとする。これは確かに大成功である。しかし、この山はわずかな刺激で崩れてしまうもろさを持っている。一方、積んでは崩れ、積んでは崩れをくり返しながら積み上げた山は富士山のごとくすそ野が広がっているから、容易には崩れないはずである。
 私たちはなるべく失敗しない人生を望んでいる。だから10%の失敗でも絶望的になってしまいやすい。あらためて、本田宗一郎氏のすごさは、99%の失敗をする自分自身を信じ続け、その上に積み上げていったことだと感嘆する。

投稿者: オボクリニック

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