ふれあい診察室

2013.07.24更新

 ちょっと前のことになるが、電車の中で目にした宣伝のコピーが印象に残った。それは初老の男性の独白で「今まで自分はみんなのために一生懸命働いてきた。しかし、振り返ってみると、そのみんなの中に自分は入っていなかったようだ。これからはもっと自分にも目をむけて大事にしてやろう」という内容だったように記憶している。私の診察室を訪れる患者さんの多くが真面目であると同時に自己犠牲的な生き方をしていることが以前から気になっていた。しかもその几真面目さや自分を殺す生き方が病気の誘因として深く関わっているようなのである。
 Kさんは50代後半の主婦であるが1年くらい前に仕事を辞め、娘の嫁ぎ先に同居することになった。半年前頃から何となく体調が優れず、気分も落ち込み気味で、頭痛、頭重が続き、食欲もなくなってきた。夜もぐっすり眠れなくなり朝早くから目が覚めてしまう。身体の弱い娘に食事の支度や身の回りの世話をかけてしまうのが申し訳なく、迷惑だから自分は生きていないほうがみんなのためになるのではとついつい死ぬことばかり考えてしまう。と暗い顔をして訴えるKさんは典型的なうつ病のようだ。聞いてみるとKさんの人生は我慢と忍従の連続であった。結婚してから旅行らしい旅行もしたことがないという。ただ真面目に自分さえ我慢すればとひたすら堪えて生きてきたのである。
 私はKさんに「うつ病になって却って良かったんですよ。このまま晩年を迎えたら最後は私の人生何だったんだろうとなるところだったんですよ。いままでがんばったんだからこれからは自分を大切にして、人生を楽しく思い出深いものに総仕上げしていきましょう。」と訴えた。まだ数回目であるがKさんはずいぶん自分の生き方に自信が出てきたようである。

投稿者: オボクリニック

2013.07.24更新


「いい加減」という言葉は本来「好い加減」という意味である。しかし、いつのまにか悪い意味での「いい加減」の方が一般的になってしまい、バランスのとれた本来の「好い加減」ができなくなってしまう人が多い。 
 Tさんは30才の優秀なシステムエンジニアである。もともと生真面目で責任感が人一倍強く、引き受けた仕事は完璧にこなすことを信条にしている責任感の強い人である。それまでも多くの仕事を任されてオーバーワーク気味であったところに、さらに今度は会社の命運をかけた大きなプロジェクトの責任者となった。失敗は許されない仕事なので、いままで以上に懸命にこの仕事に取り組んでいたところ、しだいに夜もぐっすり眠れなくなり、したがって朝起きも苦痛になってきて食欲も減退し、ついにダウンしてしまった。
 真面目な人ほどこのような板挟みの立場に置かれると、自分さえ我慢すればとがむしゃらに頑張り自分の限界を越してしまうものである。極端に例えると、2トンのトラックに5トンの荷物を積んで走ろうとするのである。その結果がこのようなうつ病であったり、過労死となってしまう。このようにいわゆる「好い加減」に仕事を遣り繰りできない人達は共通してその背景に「いい加減」はいけないという価値観を持っているようだ。自分の限界を見極め、仕事を断ることは勇気のいることではあるが「好い加減」であってこそ長続するし、知恵や工夫のこもった良い仕事ができるのである。このような一見当り前のことがなかなか頭では解っても身には付きにくいものである。一年ちかくたって「今まではやせ我慢の人生でした。いつも〜ねばならないという考え方だから例え達成できても喜ぶどころかくたびれだけが残ったものです。病気になってこういう生き方の間違いに気づけて良かった」と語るTさんの将来はもう心配ないようだ。

投稿者: オボクリニック

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